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第17回 紅茶と読書会 報告 

課題本 「夜と霧 新版」 

ヴィクトール・E・フランクル著
​2019/11/10@ 池袋

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「夜と霧」

trotzdem Ja zum Leben sagen. Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager.

1946年 発行 

 

「強制収容所における一心理学者の体験」

として書かれた本書。

現代にこそこの本の力が必要なのではないか、

と考え初めて小説以外を課題本としました。

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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。  

-ご挨拶-

  紅茶と読書会 第17回 「夜と霧」のレポートです。

 今回は8名の方にお集まり頂き、初参加の方が3名でした。

 

 今回の紅茶

  1. チャイ クレイグモア農園 (ニルギリ) BOP+ CTC

  2. ニュー・ビタナカンダ農園(サバラガムワ・スリランカ) 水出し
    本日のお菓子・ポッキー(差し入れありがとうございました)

■夜と霧について

こんにちは。

今回「夜と霧」と言う事で初めて小説以外を課題本に選んでみました。

2019年春に主催者はドイツに行ったのですが、そこで「ホロコースト記念碑」と言う場所を訪れた事がきっかけとなりました。ここは2005年に建てられた「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑施設」であり、ベルリン中心部の1万9073㎡もの敷地の中に、格子状に並ぶコンクリート製の石碑が2,711並べられた、一見すると異様にも映るモニュメントです。

この石碑群の地下には「情報センター」があり、ホロコーストは何か、と言う事が当時の文章、写真、映像で説明、展示されていて、今までなんとなくのイメージでとらえていた「ホロコースト」と言うものの恐ろしさをまざまざと見せつけられました。

ここの展示を見てかなりの衝撃を受けましたし、同時に自分の不勉強を恥じました。

「絶滅収容所」と呼ばれた施設が有ったこともここで初めて知ったくらいです。

ホロコースト記念碑

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「夜と霧」については名前は知っていたのですが、怖さと言うものが先行して中々手に取ることも無く月日が過ぎていました。しかしベルリンに行った事でその思いは変わりました。

丁度オープンしたての吉祥寺のブックマンションにてこの本を購入した事も何かの縁だ、と言うことでブックマンションで買った本の読書会を、ブックマンションで行うという運びになりました。

■夜と霧を読んで 印象に残った箇所 感想等

皆さん初読との事で割合衝撃度の高い読書になったのではないでしょうか。

​印象に残った箇所や読了しての感想などを書いてもらいました。

心に残った箇所

  1. 奥様への愛についてのところ

相手がそこにいる、いないではなくて、愛すること、そして心が満たされること。

愛について、最も美しい表現だと思いました。与えるでもなく求めるでもなく、ただ単に愛する。すばらしい。

2.皆が助け合ったところ。

人を蹴落とすよりも団結して仲間を守っていた部分。皆で一日断食したとか、追い詰められているからこそ素の心(優しさ)が出たのかなと。

 

P156
「私たちを支え、私たちの苦悩と犠牲と死に意味を与えることが出来るのは幸せではなかった。」という一文が心に残った。

 苦しんだら苦しんだ分だけ幸せになれる、とどこかで信じている自分がいましたが、収容所にいた人々にとってはそうではなかった。苦しみの末に得たものは自由だったのかもしれませんが、それ自体が幸せというものではないのだと気づきました。

そこからさらに苦しみと喪失感を乗り越えていかなければならず、それは解放されてからもその先に苦労が待ち受けているという事なんだと感じました。

自由とは幸せを描くためのキャンパスのようなものだと気づき、それは現代に生きて自分自身にも通じる事だと思いました。

 

P21

「自分で自分をもてあますよ。この原稿を持っていたいんだ。私のライフワークなんだ~」

初読時はこの言葉と執念に共感して印象に残りました。

再度読み替えるとその時の気持ちとは違っていて、その変化も含めて大切なシーンです。

 

強制収容所生活を客観視が出来るという事に驚いた。今の自分のテーマが自分を客観視するという事なので、今の状況にいる自分と比較し、格段に厳しい状況にあってさえ可能だったことが、出来ないはずはないと勇気をもらった。

 

P93

ここで誰しもテヘランの死神

運命というものがあって、どんな選択をしても個人の運命というのは変わることは無い、という事は永遠のテーマだと思う。運命を個人の選択で変えられる、変えられないというのは小説や映画のテーマになりやすく、エンタメとして楽しめる側面がある。

しかし夜と霧では現実に起こった過酷な体験で作者自身は生き延びるとい運命だったので常に自分はなぜ生かされたのか問う人生だったのではないかと思う。

 

P45

私たちに同情し、私たちの境遇をせめて作業現場にいる間だけでもましなものにしようと、できる限りのことをする監督もいた。

P47 監督の目が緩んだすきに仲間と食べ物の話をする。

P68 歌の上手いものはうらやましがられた。

P112 体験すべきことを体験する機会が皆無の時にも、生きる意味はあるのだ。

 

・ホロコーストの本はたくさん読んできたが、こんなに収容所内の事を細かく描写した本を読むのは初めてだった。人生観が変わった一冊だった。

 

本日も時間を忘れる読書会となった。

わずかな救いも残されてはいない状況下で、精神の自由と充足を守り抜くことが出来るという事は、人間の可能性を大きく広げるものだ思えました。

現代では即物的な人間の方が物質的に豊かになりやすいが、極限状態では精神が豊かな人間こそ強いという事に、皆でうなずきあいました。

この時代、国に生まれても精神だけが自由に守り抜く決意を新たにしました。

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■読書会を終えて

今回は今までで一番重いテーマを扱った本となりました。

ただ参加者の皆さんが予想以上にこの本を読んで良かったと思ってくれたのが嬉しかったです。

次回ヨーロッパに行くことがあれば、アウシュビッツやその他の収容所跡地に行き、体験をシェアできればと良いな感じました。

次回課題本は小説ですが、テーマ的には近いものになる予定です。

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