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第16回 紅茶と読書会 報告 

課題本 「地獄変」 

芥川龍之介著
2019/10/6@ 渋谷

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芥川龍之介著 

地獄変

1918年 発行 

 

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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。  

-ご挨拶-

  紅茶と読書会 第16回のレポートです。

 今回は9名の方にお集まり頂き、初参加の方が3名でした。

 

 今回のモーニング

  1. 喫茶室ルノワールの激安モーニング

■芸術至上主義 vs 現実至上主義

こんにちは。

前回、前々回とアメリカ文学が課題本だったので、次は日本の作品にしようかなぁと思っていたところ、目に留まった芥川の短編集。まぁ芥川は短編しか書いてない人なので、芥川の本は全て短編集なんですが・・・。

最近ぼんやりと感じていた、文化的、芸術的、または文学的なモノ、コトに対する「価値の置かれなさ」について話をするのも面白いかと思いこの作品を選びました。

2000年代初頭くらいまでは、「俺は音楽で生きていく!」とか「下北で舞台役者やってます、映画をいずれ作りたいよね」と言う人々は自信を持ってそう言っていた、またそういった事をまだ許容する社会だった様な気がするんですが、2019年の現在、「バンドやってるんよね、メジャーデビューしてプロになって生きていきたい」と言う人たちに対して、ある意味で蔑みと言うが、バカにする様な風潮が強いのかな、感じておりまして。

かつてはCDがバカ売れしていて「儲かる」そして「華やかでモテる」モノとして認識されていた「音楽業界」ですが、今や全く音楽がお金にならない時代、プロに「なれる」という事と、なったとしてもそこで「稼いでずっと生きていく」という事が、天井から垂らされた蜘蛛の糸を上るくらい確率の低い選択なのは確かな訳で、なんでそんなことやってるの?とまぁ普通の人は思う訳ですよね。特に音楽は需要に対する供給のバランスが悪すぎる、と言うかやりたい人が多すぎる現状があります。

音楽至上主義だったかつての自分ですら今はそう思ってしまう部分もある訳で、ただ同時にそれじゃ面白くないと言う思いも強くもあるので、最近よく言われているドリーマーとリアリストとの対立の時代、その狭間にいる人間として色々と考えて生きていきたい所存であります。

地獄変集@渋谷

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■映画「JOKER」

アメリカではドナルド・トランプが大統領になり、イギリスではジョンソンが首相になり、日本ではN国と言う政党が誕生するなど、一昔前では考えられないような冗談のような事が世界中で現実になっているこの2019年と言う時代。そして音楽とか文化とか、ってか本(小説)とか読む意味あんの?ホリエモン的それ意味あんの?的評論がもはや本流となりつつある中制作、公開されたこの映画

「JOKER

いくらバットマンシリーズとはいえ、いわゆる一般大衆向けに作られた要素がほぼ皆無のこの映画が全世界で大ヒットし、人々の心を掴んでいるというのも何か意味があるような気がしてなりません。

読書会とは関係なかったですが、もし少しでも興味を持ったならば必ず観て頂きたい映画です。

ちなみに私は映画を観たあとすぐジョーカーのお面をポチってしまいました。

中二病ウィルスの残滓を身体の中に感じずにはいられません。

■地獄変を読んで

芸術至上主義と言うテーマで地獄変を読んで語って頂いたわけですが、

​読書会を終えて各々が感じたことを書いて頂きました。

・「芸術」というものの厄介さ、自分の理想を達成するために命を削る事の痛み、そういうものを潜り抜けた先にあるものの幸福。「地獄変」と言う地獄絵図を描く一人の人間が内に秘めている「業」の深さを強烈に感じられる一遍だと思う。

凡人と偉人、現実と理想、獣と仏。色々な対比が大殿様と良秀に映されているところに小説の面白さがあった。
芸術と言うものはこの世では生き辛く、その反面凡人には見えないものを見ることが出来るのだろう。良英が幸福か不幸かは凡人にはわからないが・・・。

・最後に牛舎に飛び込むのが印象的。サルは良秀自身で、そこで娘と一緒に死んだのだと思う。
語り手により、大殿様は立派に、良秀は卑しい者として描かれているが、実際は逆で良秀こそ信念を持ち、
崇高にさえ思えた。
芸術家はそこまで入り込まないと本物にはたどり着けない。芥川、面白いです。

・娘を犠牲にし、自らも命を絶つことでした実現しなかった、良秀の芸術は芥川が修正追い求めたものであり、そこに人間への愛をも捨てきれないところに芥川の作品の真の魅力がある。

いつの時代でも失われてしまったものに対する、芥川の眼差しが作品に表れている気がする。

・芥川龍之介は初めて読みましたが、美しい文章と語り口調に引き込まれました。

一見不気味なエピソードですが、良秀の芸術的探究心や絵に対する思いの強烈さになにかとても純粋なものを感じました。

・中学生くらいの頃読んだが、芸術とはこういうものと思っていた。
大人になった今登場人物それぞれのパーソナルな部分を読み取ると、何ともあれこれ考えさせられる。
娘を焼かれる現世こそ地獄ではなかろうか。あとお殿様がまじサイコパス。
芥川は読後数日たってから効いてくる。

・美と醜、明と暗といった二項対立を見事に昇華させた物語だと思います。良英は命を懸けたドーピングと知りつつ、その芸の為にそれに賭けてしまった。

・初めて参加した読書会でしたが、まったりとしてして話しやすい会で良かった。
地獄変は初読で、大殿様を持ち上げる信頼できない語り手視点が印象的でしたが、芸を極める良秀の異常さなど色々と考えさせられました。

・メモを取りながら読み返していくうちに人間関係の相関図が見えてきた。読書の新しい楽しさがわかりました。

■読書会を終えて

今回は初めて喫茶室ルノアールで行いましたが、ルノアールのモーニングが安かったり、広かったりで、割と居心地が良かったように思います。

雑司ヶ谷の会場が思うように予約が取れない事もあり、今後はこのように開催することが増えそうです。

​次回は初のノンフィクションを課題本に取り上げる予定です。

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