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7回 紅茶と読書会 報告 

課題本 「山月記」 

中島敦 著
​2018/11/4@ 池袋

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「中島敦著 山月記」

1942年 発行 

 

~現実から逃れ虎になってしまった男の悲哀

唐の時代の中国-隴西の李徴は博学才穎で若くして官僚となったが、

己の自信とプライドからすぐに下級役人を辞し、後世に名を残すべく詩作に取組む。

しかし一向に名は上がらず、生活は困窮する。

妻、子供の為に役人に復帰するが・・・

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以下内容に触れる箇所もございますのでご了承ください。  

-ご挨拶-

  紅茶と読書会 第7回 「山月記」のレポートです。

 今回は12名の方にお集まり頂きました。

 

 今回の紅茶

  1. 濃縮紅茶+ミルク  Nilgiri Cragimore FP+ 牛乳(低温殺菌牛乳)

■高校の国語教科書にも掲載される有名な短編

 

 国語の授業で読んだと言う方も多いこの「山月記」。恥ずかしながら3年ほど前まで著者の名前すら知らず、人から薦められ読んだ時の衝撃は忘れられません。「罪と罰」と同様、もっと若いときに読みたかったと思った作品です。

今回この本を取り上げた理由は、やはり若いときに読んだ印象と、ある程度年齢を重ねてきた時に読む印象が違うのではないかと考えたからです。

 どんな人でも10代~20代前半の自分とこの李徴が重なるのではないでしょうか。

​その李徴的思考、言動を思い返し白日の下にさらして今後の人生につなげて行こう、そして参加者の中二病時代、黒歴史を語り合う事自体が面白そうだな、と思ったこの2点が読書会開催の大きな目的があったことは言うまでもありません。

今回は課題本の撮影を忘れたので写真はありません・・・

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■​参加者の方々に自身の黒歴史を書いていただきました。いくつかご紹介。

「大学入学後すぐに軽音楽サークルに入り、バンドを結成。当時はまだメタルやハードロックなどが流行っていて、私はそういうメタラー達を「ダサいや奴らだぜ!」と見下していた。

新歓イベントという事で大講堂を借り切っての演奏お披露目的なライブに向けスタジオで数回練習(曲はコピー)。

ベースと、もう一人のギターがほぼ初心者な事にもかかわらず「これでいけるやろ」と思考停止していざ本番。

曲は「RADIOHEAD」の名曲「CREEP」

https://www.youtube.com/watch?v=XFkzRNyygfk

ドラムのカウントから演奏が始まるが、ベースが全く安定せず私のギターもアルペジオが上手く弾けない。

そして追い打ちをかけたのはもう一人のギターである。

音が全く聞こえない、と言うか音がほぼ出てない。

ご存知の方もいるだろうが、この曲はサビ前のガガッ!というギターノイズが肝なのである。

誰もがそのガガッ!を期待したそのタイミング、聞こえたのはヘコッ、ヘコッという微かな音。

その後もそいつのギターとアンプからはほぼ何も聞こえず、演奏終了までの時間が拷問に等しかったのは言うまでもない。そこに有ったのはメタメタのヘコヘコCREEPである。いや最早CREEPですらなかったかもしれない。

一方メタルの奴らは完ぺきな演奏でオーディエンスを沸かしていた」

はい、これは主催者のエピソードでございます。この後改心し、演奏の上手い人を尊敬するようになりました。

「周りから話が面白いと言われていて、高校の学園祭でクイズ番組の出し物の司会をさせられました。

ちなみにアシスタントになってくれたのは僕が好きだった女の子でした。

そして本番、緊張してしまい全くだめで、まったく盛り上がらない。頭が真っ白になってしまい会場の反応もよく覚えていない。数年後仲間内でビデオを上映されたのもきつかったです・・・」

​これは・・・まさに見本のような黒歴史ですね。

仲間内で面白くても大勢の前に出て何かやった経験がないとこうなる事請け合いです。

「子供のころからピアノを習っていた。特に熱心でも特出したものも無かったが、ちゃんとした先生を付けてくれれば音大にも入れたかもしれないのに!!と大人になってから親とケンカ」

これは子供がよく言う言い訳ってやつですね。「もっとお金持ちだったらよかったのに!」「クーラーがなくて暑いから勉強が出来ない!クーラーさえあればもっといい学校入れたのに!」etc

「自分が昔自信満々で書いた文章、いま読み返すと「あ゛ぁう゛ぁ~~」となります」

これは形が残るだけに永遠と続く煉獄の苦しみですね。

「あんなに無知だったのにかかわらず、何もかも軽蔑しており、傲慢だった」

これは色々気づく前の若者特有の感性ですね。これを引っ張ってしまうとその後の人生はえらいことになります。

「自分に何かしらの才能があるんじゃないかと10代の頃から考えてきましたが、才能がないことに気づくことが出来ず今に至ります。おそらく今後もよくわからない何かを追い求めていくのでしょう」

これは何が正解なのか、誰にもわからないでしょう。

「自分は他人と違う個性を求めすぎていた事があった。生まれてくる時代を間違ったと考えることがある。

夢見る前に大人になってしまった事、やらなかったの事への後悔、コンプレックスは今もある」

生まれてくる時代を間違ったとは本好きの人なら一度は思うのでしょうか。

過去に起きた事は変えられませんが、自分の認識は変えられる、黒歴史も見方によってはあながちそうではないのかもしれませんね。

 

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​今回の課題本はある意味では皆さんの恥を語る会になりましたが、そこに向き合う事が大事なのかなと思いました。

​さすがに人に言えないような事は読書会で語る事は難しいでしょうが、谷崎潤一朗は自分の内面や欲望を恥とも思わず、家族も巻き込んで小説として残したことを考えると、文学のネタとしては良い素材なんでしょうね、

次回の課題本は動物は登場しませんが地球外生命体が出てくる「あなたの人生の物語」です。

文庫本としてはやや高いですが、買って損は無いレベルの短編集だと思うのでご参加お待ちしております。

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